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ゼロカーボン・スチールとは

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現在の鉄鉱石からの鉄鋼(スチール)の製造には石炭等の化石資源が必要で、CO2が排出されています。 地球規模でさらなるCO2削減が望まれているなか、日本鉄鋼連盟は革新的な技術開発にチャレンジしています。 ゼロカーボン・スチールは、この鉄鋼製造におけるCO2排出をゼロにする、究極のスチールです。

『ゼロカーボン・スチール』はCO2排出をゼロにするという願いを込めて名付けられました。 ロゴのシンボルは「Zero-Carbon」の「Zero」(0)をモチーフにしています。 青と緑のグラデーションと包み込むようなラインは水素と人類の手を表し、左の葉は環境保護を表しています。 『ゼロカーボン・スチール』のロゴには「環境に優しい未来をこの手で作る」というメッセージが込められています。

地球温暖化について

地球温暖化とCO2

温室効果ガス(Greenhouse gas, GHG)は地球温暖化の原因の一つと言われています。炭素系の多くのガスがこれに含まれますが、中でも人為的な行為により圧倒的に大量に排出され、地球温暖化への影響度が大きいと考えられているのがCO2(二酸化炭素)です。 産業革命以降、石炭、石油、天然ガス等の化石燃料の使用が増え、その結果、大気中に排出される二酸化炭素の量も増加しています。 特に鉄鋼業は、その製造量の多さから日本の産業部門の中で最大のCO2排出量を示しており、その低減は、重要な課題です。

日本の2019年度CO2排出量(電気配分後)

※図を拡大して見ることができます。 地球温暖化とCO2

電気事業者の発電に伴う排出量を電力消費量に応じて最終需要部門に配分した後の値。 機械は金属品製造業を含む。化学工業は石油石炭製品を含む。 環境省:日本の温室効果ガス排出量データ(1990~2019年度)(速報値)より作成

現在の鉄鋼の製造法

鉄鋼は鉄(Fe)が空気中の酸素(O)と結びついた「さび」に似た鉄鉱石を原料としています。鉄鉱石から鉄を製造するには酸素を引きはがす必要があります。この酸素を引きはがす材料として、現在では石炭などの化石燃料に含まれる炭素(カーボン、C)が用いられています。炭素は鉄よりも酸素に非常に結びつきやすいので鉄鉱石から酸素を引きはがしてくれます。この反応を「還元反応」と呼びます。鉄鉱石の炭素による還元反応によって鉄が生成しますが、その際にCO2も一緒に発生します。

水素を用いた鉄鋼の製造法

炭素と同様に水素ガス(H2)も酸素と結びつきやすいため、水素を使っても鉄鉱石を還元できます。水素を使って鉄鉱石の還元を行う場合、鉄とともに発生するのはH2O(水)です。そのため、水素を鉄鉱石還元に使えれば鉄鋼製造におけるCO2発生はなくなり、ゼロカーボン・スチールが実現するはずです。

炭素による鉄鉱石の還元

水素による鉄鉱石の還元

水素を用いた鉄鋼の製造法

鉄鋼製造における
水素利用の課題

しかし、水素による鉄鋼製造は以下の理由により、簡単ではありません。

(1) 水素で還元すると冷えてしまう

従来の石炭による鉄鉱石の還元反応は発熱反応なので、反応が進むと鉄が溶けて出てくる、大変都合の良い反応です。一方、水素による鉄鉱石の還元は吸熱反応と言って、熱を必要とする反応なので、水素を加熱しないと反応が進みません。 爆発性のある水素ガスを大量に高温に加熱する技術はこれまで世の中のどこにもない技術で、非常にハードルの高い技術開発が求められます。

炭素による鉄鉱石の還元

水素による鉄鉱石の還元

水素で還元すると冷えてしまう

(2) 従来の鉄鋼製造法では作れない。

現在の鉄鋼製造は、「高炉」と呼ばれる高さが100メートル位ある巨大な反応炉を用いて行われます。高炉に鉄鉱石と石炭を交互に積層し、下から高温空気を送風すると高炉内で還元反応が起こり、鉄鋼が製造され、CO2が排出されます。この際、石炭は燃えるのではなく、鉄鉱石の還元反応の原料として作用しますが、それとともに鉄鉱石を固体として支え、高炉内の通気性を維持するという重要な役割も果たしています。 一方、石炭を水素ガスに置き換えた場合、水素は気体なのでこの固体の支えがなくなってしまいます。従来の高炉法に水素を入れることは石炭を減らすことになるため、高炉に水素を入れる量には限界があります。

高炉法はエネルギー効率、生産性共に非常に優れた鉄鉱石還元法で、数百年の歴史があり、世界の鉄鋼生産の大部分がこの方法で行われています。また、極めて巨大な反応炉で、その製造には何百億円もの費用がかかるため、従来の高炉を生かしつつ、ぎりぎりどこまで水素を入れられるかが技術上の大きな課題になります。

※図を拡大して見ることができます。 従来の鉄鋼製造法では作れない。

(3) 大量の安価カーボンフリー水素が必要

石炭は炭鉱を掘れば出てきますが、水素ガスは地球上にはほとんど存在せず、人為的に作る必要があります。しかし、水素の利用はこれまで一部の産業に限られているため、現在、大量の水素を広範囲に供給する社会基盤はほとんどありません。 また、水素製造はこれまではほとんどが化石燃料から作られており、水素製造時にもCO2が発生しています。ゼロカーボン・スチールのために使う水素は、その製造時にもCO2を出さない水素(カーボンフリー水素)でないと最終的には意味がありません。 さらに、鉄鋼は世の中のあらゆる場所で大量に使用されている基礎素材であるため、その製造に必要な水素も安価であることが求められます。 つまり、ゼロカーボン・スチールの実現には、大量の安価カーボンフリー水素の供給という社会インフラの整備も不可欠です。

2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略(2020)における水素価格と供給量目標(○)および水素価格のトレンド予想(破線)

※図を拡大して見ることができます。 大量の安価カーボンフリー水素が必要

同戦略における国内供給目標

※図を拡大して見ることができます。 大量の安価カーボンフリー水素が必要

ゼロカーボン・スチールへの挑戦

上記のように様々な課題があるゼロ―カーボン・スチールですが、日本鉄鋼連盟ではその実現に向けて、以下のようなステップでその実現に挑戦します。

(1) COURSE50からSuper COURSE50への挑戦

COURSE50では、大量水素供給の社会基盤が存在しない現状においても水素による鉄鋼製造を一部実現すべく、製鉄所内で発生する副生ガス(現在は他の加熱設備等で利用されている)を高炉に回すことにより、高炉に10%程度までは水素を吹き込めると判断し、それに応じて高炉に投入する炭素量を減らすための研究開発を進めています。 一方ゼロカーボン・スチールに向けては、十分な水素供給の社会基盤ができる時代を見越して、製鉄所外から水素を購入してさらに高炉への水素吹込み量を増やし、高炉の炭素量を減らす限界への挑戦を行います。

なお、Super COURSE50では上記の通り、支えとなる炭素をゼロにすることはできません。そのため、CCUS(CO2 Capture, Utilization and Storage、CO2捕集、利用、貯留)技術を組み合わせて残りのCO2の排出を抑制する技術開発も必要です。特にCCS(CO2捕集、貯留)においては貯留地の整備等の社会基盤整備も併せて必要です。

(2) 水素還元製鉄への挑戦

Super COURSE50での水素利用限界を超えて、完全に水素のみで鉄鉱石を還元するためには、高炉とはまったく異なる鉄鉱石還元方法が必要です。 石炭を用いない鉄鉱石製造法として、直接還元法と呼ばれる天然ガス(メタン)を利用する方法があります。この方法は、石炭の支えがなくても鉄鉱石の還元ができる(ただし溶融はせず固体の不純物を含んだ鉄が生成)ため、100%水素のみによる鉄鉱石の還元反応(水素還元製鉄)ができる可能性を秘めています。 しかし、この方法に100%水素を適用すると、原料の鉄鉱石が粉々になって(粉化)目詰まりしてしまうという問題が発生します。また、鉄鉱石の還元が進むと今度はお互いにくっついてしまい(固着)取り出せなくなるといった問題が発生してしまいます。これらを防ぐためには、現在では限定された特殊な鉄鉱石しか使えません。したがって、完全な水素還元製鉄技術はまだ世の中に存在していません。 しかし、日本鉄鋼連盟では、ゼロカーボン・スチールの実現には、水素還元製鉄も必須と考え、この技術の開発にも挑戦していきます。 ゼロカーボン・スチールへの挑戦は、これらすべての技術開発への挑戦を含んでいます。

※図を拡大して見ることができます。水素還元製鉄への挑戦

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